1984年のアルバム『ザ・ワークス』では軌道修正を図り、ファンが待ち望んでいたような楽曲が集まった保守的ともいえる作品に仕上がった。この頃になるとアメリカや日本での人気は落ち着く一方で、テイラー作の「Radio Ga Ga」が19ヵ国1位と大ヒットしたり、ディーコンの「ブレイク・フリー(自由への旅立ち)」が、南米などで「自由へのシンボルとしての曲」と位置づけられるなど、ヨーロッパ圏だけではなく南アメリカやアフリカといった地域でも人気を集めるようになっていった。
1989年発表。前作『Kind of Magic』に伴うスタジアム・ツアーで人気を極めた彼らが地に足をつけて作ったパーソナルなアルバム。スケールの大きなスタジアム・ロック「アイ・ウォント・イット・オール」、エレクトロ・ビートを導入した「インヴィジブル・マン」、疾走感あふれる「ブレイクスルー」など精気がみなぎる好ナンバーが目白押しだが、若さに任せることなく、巧みにコントロールされた大人のロックとなっている。噛めば噛むほど味わいを増す、円熟の域に達したクイーン・サウンドに酔いしれよう。(山崎智之)
1984年、解散の噂を一気に吹き飛ばしたアルバム。シンセ・ポップに接近したオープニング・ナンバー「RADIO GA GA」、胸がすくハード・ロック「ハマー・トゥ・フォール」、メンバー4人が女装したビデオクリップが話題となった「ブレイク・フリー(自由への旅立ち)」ほか、強力すぎるヒット曲が次々と飛び出す。間違った方向に向かう人間社会に警鐘を鳴らす「悲しい世界」をはじめ隠れた名曲もあり、80年代クイーンを代表する壮大なスペクタクルとなっている。本作に伴い、1985年に最後のジャパン・ツアーが行われたことも思い出深い。(山崎智之)
繊細なる過剰演出ぶりで記憶される本作だが、実はヴァラエティ豊かな楽曲がそろっている。ゴージャスなピアノに支えられた「You're My Best Friend」、ポール・マッカートニー風の「39」、ミュージック・ホールが似合いそうな「Lazing on a Sunday Afternoon」、メタル・ロックにペダル・キーボードを導入した「Death on Two Legs」と「I'm in Love with My Car」など、実に多彩だ。本アルバムはもっともクイーンらしいアルバムといわれている。当然の評価といえるだろう。(Daniel Durchholz, Amazon.com)
本作『シアー・ハート・アタック』は、ほとんどすべてのリスナーに受け入れられそうなクイーン作品だ。グラム・ロック、プログレ、過剰なまでに華麗なギター・プレイ(ブライアン・メイが変幻自在なパフォーマンスを披露する「ブライトン・ロック」と「Flick of the Wrist」に注目)、初期スピード・メタル(「ストーン・コールド・クレイジー」)、そしていかにもクイーンらしいゲイっぽいユーモア(コンサートの定番曲「ナウ・アイム・ヒア」でフレディ・マーキュリーがぶちまける文句“アメリカの新しい花嫁候補さ/心配ないよ、ベイビー、僕は安全で健康だから”)、何でもありの内容なのだ。